知っておくと便利
- 2017/04/21
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輸出の豆知識
通関
1) 輸出には税関長の「輸出許可」が必要
「輸出しようとする貨物を「保税地域」に搬入した上で、税関に必要書類を提出して輸出申告を行う。」
国は様々な理由で貿易取引する物品を規制しており、これらの規制に違反していないことを証明する必要がある。
法律によって、輸出に際しては税関長に対して輸出申告を行い、許可を得なければならないことも定められている。(輸出通関手続)
※輸出手続きは通関業者に依頼するのが一般的
保税地域
- 輸出入を行う貨物は、原則的にはいったん保税地域に搬入しなければならず、保税地域で輸出通関を受け、輸出許可を受けると「外国貨物」として扱われる。
- 輸入の場合にも、保税地域に外国貨物を運び込み、輸入通関を行って輸入許可を受けると「国内貨物」となる。
- このように、保税地域とは、通関手続きを行うための暫定的な貨物の置き場所をいう。
- 保税地域では、定められた期間の間に通関を行い、輸入の場合は関税等の支払いをしたうえで、船積や引き取りを行うことになっている。
- もしその期間を過ぎても貨物が引き取られない場合、該当の貨物が税関に没収される。これを関税法では「収容」という。
◆指定保税地域(Designated Hozei [Bonded] Area : DHA)
財務大臣によって指定される国や地方自治体の土地。蔵置期間は原則1ヶ月。
◆保税蔵置所(Hozei Warehouse : HW)
税関長が許可した民間の保税地域。海貨業者や通関業者の倉庫。
船会社のCYやCFSなどが申請し、保税地域になっているため、海貨業者が輸出者から引き渡しを受けた貨物や輸入した外国貨物を、輸出通関や輸入通関のためにわざわざ国の保税地域へ移動させる必要がない。蔵置期間は原則2年。
◆保税工場(Hozei Manufacturing Warehouse : HMW)
関税の取り扱いを留保したまま、貨物の加工や仕分等が行える工場。税関長の許可が必要で、蔵置期間は原則2年。
◆保税展示場(Hozei Display Area : HDA)
外国貨物のまま、貨物を展示することができる場所のこと。国際的な見本市などの際に、期間限定で指定される。
◆総合保税地域(Integrated Hozei Area : IHA)
これも外国貨物のまま展示をすることができる場所。但し、保税展示場と違い、蔵置期間は原則2年と長期。
<保税地域の例外>
- 商品の性質上、保税地域へ搬入することが不可能、または適切ではない場合、税関に申請して許可を受けることで、保税地域ではない場所に外国貨物を保管したり、その場所で税関検査を受けたりすることができる。これを「他所蔵置」と言う。
- 下記貨物を取り扱う場合、通関業者を通じて(または自身で)他所蔵置許可申請書を税関に申請する必要がある。
[他所蔵置が認められる貨物]
1. 巨大な貨物、または重すぎる貨物
2. 量が多すぎる貨物
3. 保税地域との交通が著しく不便な地域にある陸揚貨物または積込貨物
4. 腐敗や変質などでほかの貨物を汚損する恐れのある貨物
5. 貴重品や危険物、生鮮食料品など、保管に特殊な施設を必要とする貨物
6. その他、税関長が保税地域外の場所に置くことが必要だと認めた貨物
通関業務に関する特例措置
◆通関業務における基本的な特例(携行品や郵便貨物)
1. 郵便路線の通関申告免除
- 国際郵便路線を利用して見本(サンプル)等の小規模な貨物輸出入を行う場合、輸出入許可を求める申告は必要なし。
- 輸入に際しての納税申告も免除されるが、免税ということではなく税関における課税額決定のあと納税額が通知される。
2. 携行品の口頭輸入申告の許可
- 旅行者や航空機・船舶乗組員の携行品については、一般に入国審査のあとに口頭で輸入申告を済ますことができる。
3. 少額貨物の輸入申告書の作成免除
- 輸入貨物の課税価格が1品目20万円以下の場合、各々輸入申告書を作成せず、仕入書(Invoice)や航空運送状(Air Way Bill)によって輸入申告することが認められている。
- 但し、輸入貿易管理令によって経済産業大臣の輸入承認が必要な場合や、関税の減免を受ける場合はこの限りではない。
◆コンテナの関税免除とコンテナ扱い
1. コンテナ自体の関税は免除
- 貿易取引に用いられるコンテナ容器も、厳密には輸出品・輸入品といえる。
- コンテナは、CCC条約(正式名称:コンテナに関する通関条約、通称:コンテナ条約)やTIR条約、およびこれに対応する国内法(コンテナ特例法)によって、関税を免除したまま輸入したり、簡易な手続きで通関したりすることが可能になっている。
2. コンテナ輸送時に便利な「コンテナ扱い」
- コンテナ輸送で輸出する場合、事前にコンテナ扱い申出書を提出して税関長の承認を得ると、コンテナに商品を封入した状態のまま輸出申告ができる。これを「コンテナ扱い」という。
- 保税地域外にある自社の倉庫・工場などで商品をコンテナに積み込むが、その際に公認の検数検定機関の係官などの立ち会いのもと、保税地域であるCYやCFSに搬入したのちにシール(封印)をすることが条件になる。
- この税関長の承認は、一定の条件を満たすと最長1年間にわたって包括的に承認を受けられる。現在の海上輸送はコンテナ船が主流なので、コンテナ扱いの包括承認を受けておくと、通関業務の効率が大きく向上する。
◆特定輸出申告制度
1. 自社工場で輸出許可の取得ができる。
- 輸出を行おうとする企業にとって、輸出通関のたびに貨物を保税地域に搬入しなければならないのは大変不便。
- これまで長期間法律を遵守して通関手続きを行ってきたなど、信頼性の高い企業に限り、保税地域外の自社工場・倉庫などで、輸出申告および税関検査、さらには輸出許可の取得までを行えるようにする特定輸出申告制度が設定されている。
- あらかじめ税関長に承認を受けた特定輸出申告者だけが利用できる制度で、輸出までの費用や時間を縮減できるので非常に有利になる。
- 輸出許可を受けた後に船積のため港まで運送する際も、保税運送の承認を受ける必要もない。
2. 特定委託輸出者でも部分的に優遇される。
- 認定通関業者に委託した特定委託輸出者もこの制度を利用できるが、この場合は自社倉庫・工場で行えるのは輸出申告のみ。
- 税関審査や検査、輸出許可の発行は通常通り保税地域で行われる。
◆特定輸入申告制度
1. 簡易申告制度
- 輸入についても、特例輸入申告制度(「簡易申告制度」)が用意されている。
- 輸入の場合には、輸入者は輸入申告と納税申告を同時に行う必要があるが、このうち納税申告について後日での申告を認めることで、通関審査にかかる時間を短縮し、より迅速な貨物の引き取りを可能にする制度。
- 仕入書(Invoice)や原産地証明書、運賃明細書などの納税申告の証明書類についても、一定期間保存しておき、税関からの要請があったときにだけ提出すればよくなる。
- 引き取り時にも呈示は不要なので、輸入者としては急いでこれら書類を準備する必要はなくなる。(書類が不要ということではない)
- さらに、本船が入港する前に輸入申告を行うことも認められるため、輸入通関にかかる時間が大きく短縮される。
- また、担保の差し入れを条件に、関税等の納期を最長2ヶ月まで延長できる。(「関税等の納期延長制度」の適用)
2. 特例委託輸入者もメリットを受けられる。
- 輸出の場合と同様に、コンプライアンスが高いとして税関長の許可を受けた特例輸入申告者、および認定通関業者に委託した特例委託輸入者のみ。
- 輸出の場合と違い、特例委託輸入者もほぼ同じメリットを享受することができる。
- 尚、輸入申告の際に省略された納税申告は、その後、輸入許可の発行日が属する月の翌月末日までに輸入地の所轄税関長に対して行い、一定期日内に納税する。
◆他所蔵置
保税地域に搬入することが不可能、または不適当な貨物は、保税地域外で保管、つまり他所蔵置したまま通関手続きを行うことになる。別途、他所蔵置許可申請書を税関に提出し、許可を得ている必要がある。
1. 本船検査
本船に貨物を積み込んだまま検査を受ける方法で、「本船検査」「本船扱い」という。例としては、セメントや鋼材、ソー
ダ、石炭などの鉱物、小麦・大豆などの穀物、公海上で採捕した魚介類などが本船扱いとされることが一般的。
2. 艀船検査
主に輸出の際に、本船に船積するために貨物をはしけ(=艀船)に載せた状態のまま、税関検査を受ける方法。「艀船
(ふせん)検査」「ふ船扱い」「船中検査」という。
◆到着即時輸入許可制度
- 生鮮食料品など、輸入許可申請や納税申請に時間をかけることができない貨物の場合、NACCSを通して予備申告を行うことで、到着後、保税地域への搬入を行わず、すぐに貨物を引き取ることができる到着即時輸入許可制度という仕組みがある。
- この制度では、船積通知、あるいは航空機での発送の通知を受けた段階で、本制度を利用することを明らかにしてNACCSで予備申告を行い、税関が特に審査不要と認定した場合に限り、貨物の到着を確認次第、保税地域への搬入を条件とせずに輸入申告を行うことが認められる。
- この申告に対して、税関は直ちに輸入許可を出すため、実務的には、到着後ほとんど通関の時間をかけずに荷物を引き取ることができる。
- 当初は航空輸送の場合に限定して適用されてきた制度だが、平成15年9月以降、海上輸送にも適用できるようになった。
【NACCSとは?】
貨物通関情報処理システム(NACCS : Nippon Automated Cargo Clearance System)
- 本来は、通関手続きの迅速化・電子化を目的に導入されたシステムで、税関、通関業者、海貨業者、船会社、航空会社、航空貨物代理店、混載業者、倉庫会社、銀行など、貿易取引に登場する多くのプレイヤーに回線が引かれ、端末機を通して通関に関するほとんどの業務をオンラインで実行することを可能にした。
- 現在では、通関業務に限らず検疫業務や銀行業務などもこのシステムを通して行うことが可能であり、貿易業務の総合的な基盤システムとしてより発展している。
- 海上貨物に関するNACCSと航空貨物に関するNACCSの2つがあり、それぞれSea NACCS、Air NACCSと呼ぶ。
- 具体的には、輸出申告、輸入申告、予備申告、関税の修正申告、税関による輸出入許可の発行、入港届などをオンラインで行うことができる。
◆BP承認制度
- 輸入貨物については、原則として税関の輸入許可を受けなければ輸入者は貨物を引き取ることができない。しかし、これまでに輸入されたことがないような商品で、適用される課税標準等を決めるのに時間がかかったり、取引先への納期が切迫していたりするような場合には、税関長の承認を得たうえで、輸入許可を受ける前に貨物を引き取ることができる。
- これを、「輸入許可前引取承認」、またはBefore Permitを略して「BP承認」という。
- 輸入許可前引取承認を受けられるのは、申告納税方式を採る貨物のみ。(特例申告の貨物は承認されない)
- また、承認申請の段階で、関税額に相当する担保を差し入れることを要求される。
- しかし、早期に貨物を引き取ることができるので、利用価値は大きい制度といえる。
- 引き取ったあとで不明だった数量が判明したり、遅れていた書類が到着した場合には、遅滞なく税関にこれらを届け出なければならない。
- 引取後に関税額等が確定すると、後日、税関からその内容が通知されるので、それを納付すると正式に輸入許可が出される。
[BP承認が認められる貨物]
1. 貴重品や危険物、生物などの貨物
2. 生鮮食料品など、変質・損傷の恐れがあり、特に引き取りを急ぐ必要があるもの
3. 原産地証明書の提出が遅れるとき(但し、「原産地証明書の提出猶予」の承認を受けた場合に限る)
4. 陸揚げ後に数量を確定させる契約(揚地ファイナル)などによる貨物で、輸入申告時に貨物の数量が確定していないと
き
5. 新規輸入品で課税標準の決定や免税審査に時間がかかるとき
6. 展示会等へ出品するもので時間的制約があるとき
◆関税等の納期延長制度
- 輸入通関にあたっては、原則、関税等を納付しなければ税関からの輸入許可を受けることができず、貨物を引き取ることができない。
- しかし、資金繰りなどの面から、輸入者としてはこうした支払いの納期を延長したいことがある。
- この場合、関税の納期延長制度を利用することで、最長3ヶ月まで納期を延長してもらうことができる。
- 但し、関税額等に相当する担保を提供することが条件となる。
- 個別の輸入申告ごとに納期の延長を申請する個別延長方式と、1ヶ月毎に複数の輸入申告をまとめて納期延長申請する包括延長方式がある。
- また、特例輸入申告者に認定されている場合にも、担保の差し入れを条件に、最長2ヶ月まで延長することができる。
◆ATAカルネ(通関手帳)
- 海外で催される展示会等へ商品を展示しその国で販売せずに日本へ商品を戻す場合、外国で仕事をするため修理や製造に必要な道具類を別途送っておいて終了したら日本へ送り返す場合、往路で日本から輸出、向け地で輸入、復路で向け地から輸出、日本で輸入と4回の通関手続きを要する。
- また、本来なら一時輸出では関税の支払いは不要だが、場合によっては関税等を二重で徴収される恐れさえある。
- もし、複数の国にわたって移動するのであれば、国の数だけこうした通関手続きの手間も増える。
- こうした一時輸入および一時輸出における通関業務の煩わしさを解消してくれるのに、ATAカルネ(通関手帳)がある。
- これは、ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に加入している国同士で物品の一時輸入を行う際に、1年以内に再輸出することを条件にATAカルネの発行を認め、該当物品の免税輸入を認める制度。
- 通関の際に、事前取得しておいたATAカルネを呈示することで、簡単な手続きで免税輸入を行えるようになるため、状況によっては非常に便利に利用できる。
<輸入税の支払い保証機能>
- ATAカルネの申請にあたっては、担保の差し入れ、またはそれに相当する担保措置料の支払いが必要になる。
- これは、ATAカルネが輸入国における輸入税の支払保証書の役割も果たしているため。
- ATAカルネで免税輸入した物品は、あくまで1年以内に再輸出することを前提にして関税等が免除される。そのため、もしその物品を再輸出せずに現地で販売等した場合には、通常の輸入物品と同様に輸入税の支払義務が発生する。
- しかしこの場合、現地の税関等は輸入者ではなく、ATAカルネの発行団体に輸入税の支払いを要求する。そうした場合に備えて、発給時に担保差し入れ等が求められている。
- 輸入税の支払いを求められた発行団体は、担保をその支払いに充当、不足があれば輸出者に請求する。
- 逆に、当初の通りに再輸出を行い、不要となったATAカルネを返還すると、発行団体は担保を返却する。
- 日本では、一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA http://www.jcaa.or.jp/)が、ATAカルネの発行団体となっている。
- ちなみに、自動車による国際旅行を円滑にする目的で利用される自動車通関手帳(自動車カルネ)や、ATA条約に非加盟の台湾との間で利用されるSCCカルネも同様。
<ATA条約加盟国>
ヨーロッパ | アジア | 北米 | |
---|---|---|---|
アイスランド *アイルランド アンドラ *イギリス *イタリア ウクライナ *エストニア *オーストリア *オランダ *キプロス *ギリシャ クロアチア ジブラルタル スイス *スウェーデン *スペイン *スロバキア *スロベニア セルビア *チェコ |
*デンマーク *ドイツ ノルウェー *ハンガリー *フィンランド *フランス *ブルガリア ベラルーシ *ベルギー *ポーランド ボスニア・ヘルツエゴビナ *ポルトガル マケドニア *マルタ モルドバ モンテネグロ *ラトビア *リトアニア *ルーマニア *ルクセンブルク |
韓国 中国 日本 香港 インド シンガポール スリランカ タイ パキスタン マカオ マレーシア モンゴル |
アメリカ カナダ |
中南米 | |||
チリ メキシコ |
|||
大洋州 | |||
オーストラリア ニュージーランド |
|||
中近東 | アフリカ | ||
アラブ首長国連邦 イスラエル イラン トルコ レバノン |
南アフリア アルジェリア コートジボアール セネガル チュニジア モーリシャス モロッコ |
*EU 27ヵ国
下記の国/地域においても、関係各国の関税領域扱いとしてATAカルネを使用することができる。
カルネ使用可能国/地域 | 関税領域扱いをする国 |
---|---|
タスマニア | オーストラリア |
モナコ公国、コルシカ、仏領ポリネシア(タヒチを含む)、 ニューカレドニア、 |
フランス |
※カナリア諸島、パレアレス諸島 | スペイン |
ボツワナ、レソト、スワジランド、ナミビア | 南アフリカ |
リヒテンシュタイン | スイス |
ガーンジイ島、マン島、ジャージー島 | イギリス |
グアム、プエルトリコ | アメリカ |
フォロー諸島(グリーンランドを除く) | デンマーク |
※一時輸入国欄にカナリア諸島と記入
貿易取引でのクレーム
貿易取引の過程で起こる様々なトラブルに関して、金銭を伴う損害賠償請求などをすること、またはされることを「クレーム(Claim)」という。
(国内取引での「苦情申し立て」の意味ではないことに注意)
◆運送クレーム
[荷物の破損・個数不足・不着など、明らかに船会社等に責任がある場合のクレーム]
貿易当事者は船会社や航空会社と運送契約を結ぶが、契約条項には必ず、運送クレームに関して”運送会社の免責”を認める条項が盛り込まれている。
この免責条項を認めない限り、運送会社は運送を引き受けないので、実務では運送トラブル責任を直接船会社や航空会社へ求めることは少ない。(実際に船会社等にクレームしても、運送会社側は契約条項に基づいて免責を主張する)
実際には貨物海上保険などの損害保険で対応することになる。(⇒「保険クレーム」として扱うことが一般的)
◆保険クレーム
[航海中の共同海損や原因不明の貨物喪失など、船会社等に責任を求めることができない場合のクレーム]
[または、運送クレームの場合で、船会社等にクレームしたものの免責主張された場合]
共同海損:被害を受けた荷主の損害を、それによって利益を受けた他の貨物の荷主が共同で負担する。
(例:海難事故(台風・大嵐)では沈没を避けるため、一部貨物を投棄)
<問題の発生にどう備えるか>
1.荷卸し段階で検品
荷主が必ず行うべきこととして、輸入港での商品荷卸しの際、荷主の代理人に必ず「検品」をさせること。
検品の際、商品に破損など異状が発見された場合は、船会社や航空会社に対し、以下の書類にリマーク
(Remark:問題発生の表記)を要求する。
- コンテナ船(LCLの場合) ⇒ デバンニング・レポート(Devanning Report)
- コンテナ船(FCL・在来船の場合) ⇒ ボート・ノート(Boat Note)、「貨物受渡書」ともいう
- 航空輸送の場合⇒ デバンニング・レポートや入庫報告書
2.損害発生の通知
荷主は速やかに保険会社やその代理店に損害発生の通知を行い、保険クレームを申し立てる意志を伝える。
船会社や航空会社に対して、損害内容を通知する「事故通知(Claim Note)」を提出する。
※船会社への運送クレームは通常3日以内、航空会社へは通常7日または14日以内に通知しないと、保険による
補償を受けられないことがある。
3.第3者鑑定機関による鑑定
- 荷主と保険会社(または代理店)との間で話し合いが行われ、第3者鑑定機関(Surveyor)による鑑定を行うかどうか決定される。(サーベイヤーの起用には費用がかかる。原因や損害内容が明白である、または損害額が少額の場合などには起用されないこともある)
- サーベイヤーとしては、英国のロイズ(Lloyd‘s)が最も有名で世界的な信用力がある。
(日本では日本海事検定協会や新日本検定協会などがある。) - サーベイヤーを起用した場合、サーベイヤーは正式な報告書であるサーベイ・レポート(Survey Report)を作成する。
- サーベイ・レポートでは、貨物やその引き渡しの明細、損害の原因と程度、処理方法と付帯費用の明細などが詳細に述べられる。
- このサーベイ・レポートと必要な書類を揃えて「本クレーム」を、保険会社(または代理店)経由で行う。
◆貿易クレーム
[商品違いや契約品質の未達、梱包不良など、貿易取引の相手方の責任に起因する場合]
<原因と対応方法>
◆商品の品質・数量等の違い
色・柄・寸法などが契約した内容と異なる場合、または商品そのものが約束した商品と異なる場合(誤発送)、品質不良や数量不足など、商品の状態に関わる問題が発生したときには、貿易クレームになる。
1.品質不良の場合
1) クレーム発生時の対処方法に関する事前合意
- 契約時に、品質不良が発生した場合の不良品即時交換や修理代金弁償などの具体的対処方法を双方で合意し、契約文書の条項に盛り込む。
- 品質に関する判断基準として、見本品(サンプル)や図面などの客観的な証拠を手許に保管しておく。
2) 品質についての認識をしっかり一致させる
- あらかじめ相手方との間でどの程度から品質不良とするのか、数値ベースで認識を一致させるようしっかりと話し合う。
- 当初から品質規格基準書を含む契約書を締結すると、比較的安全といえる。
3) 生産途中の品質をチェックする
- 時間や費用に関して許容できるなら、相手方への注文発送後、相手方の工場等に直接出張し、生産中の商品の品質レベルを事前にチェックする。
(品質に関する問題発生を絶対に許容できない個別生産の高額商品などでは、この方法も検討すべき)
4) 荷卸しした商品の迅速な検品
- 荷卸しされたら、できる限り早急に検品を行い、問題がなくても、速やかにその結果を相手に通知する体制を整備しておく。
2.数量不足の場合
コンテナの封印(シール)に異常があるかどうかによって対応が異なる。
具体的には、不足分の商品を事後に相手方に発送したり、代金減額で対処することが一般的。
1) コンテナの封印に異常がある場合
- 数量不足の原因として盗難が強く示唆される。
- この場合には、保険クレームとして保険会社へ保険金の求償をして解決する。
- 盗難の防止策として、包装・荷印の記載を、内容物がすぐに判る商品名ではなく、記号や暗号で行う。
2) コンテナの封印に異常が無い場合
- 商品をバンニングした段階で既に数量が不足していた可能性が高い。
- この場合には、数量不足を輸出者の責任として、貿易クレームで処理する。
◆商品の受け渡しに関する問題
船積や納品の遅延など、運送会社ではなく発送者の責任によって商品の受け渡しが遅延した場合には、納期の遅れにつながり貿易クレームになる。
1.輸出の場合
相手方からの急な仕様変更依頼等による生産遅延発生、相手方の信用状開設や支払い遅延による船積み遅延が原因
の場合がある。
- 相手方に責任のある船積遅延=納期遅延の場合、納期が遅れる旨を相手方に事前通知したうえで、輸出者側での船積みを実行する。
- 船や航空機の輸送スペース確保について常に情報収集し、輸出者側の責任で船積みが遅れないよう注意する。
- 好景気の場合、船・航空機の輸送スペースは不足し易く、充分な時間的余裕を見てブッキングを進める。
- 不景気の場合、就航していた定期便が減便されることもあり、事前に船会社やフォワーダーと情報交換しておく。
- 輸出者は、相手国側の祝祭日・記念日・国政選挙日程などのカレンダー、文化・慣習・政治・経済等に敏感になり、相手国での港湾施設や行政機関の非営業日、万一のストライキや内乱などの危険性についても、常に情報収集するよう心がける。
2.輸入の場合
納期遅延について、原因が明らかに相手方の外国企業にある場合は、相手方に対する損害賠償を請求することになる。
- 契約を締結する段階で、納期の遅延に備えたペナルティ(罰金)をあらかじめ設定しておく。
(次回の契約の際に、前回の契約での遅延に対するペナルティを課す場合もある) - 原因が相手方にない場合では、原則として保険クレームの対象となり、保険会社からの保険金で損害をカバーする。
※貨物海上保険等の損害保険には、通常、免責事項が定められているため注意が必要(下記参照)
(2) 輸出梱包の不完全や積み付けの不良。
(3) 不可抗力(例えば台風や地震等)による運送自体の遅延。
(4) 貿易当事者(輸出者・輸入者)の故意や過失による損害。例えば、輸入者の商品取扱に不備がある等。
(5) 保険の種類としてカバーできない原因。例えば、戦争や内乱を原因とした貨物損害については、別途特約を
追加して担保する必要がある。
◆代金回収や注文内容変更に関する問題
輸入者からの商品代金の不払いや、正式発注後の突然の注文キャンセルなども、貿易クレームになる。
1.代金回収トラブルの場合
輸出の際、相手方からの代金の支払いが、契約した通りの方法や期日で行われない場合がある。
※契約の前段階で、相手先の信用調査をしっかりと行っておくことが重要
- 相手方に対して書面やEメール等によって支払遅延を通知するとともに、場合によっては国際電話や出張訪問で直接支払いを催促する。
(相手方に通知・催促する際に大事なことは、支払期限とその金額を明確にすること)
2.注文変更に関するトラブルの場合
相手方からの注文を受領し、すでに商品に生産を済ませたあとで、相手方の一方的な都合(例えば、財務状況の変化)
によって、直前になって注文キャンセルされた場合。
(相手方の一方的な注文キャンセルについては、契約不履行責任を厳しく追及すること)
- 代金回収トラブルと同様に、書面やEメール等で契約履行を強く催促するとともに、場合によっては国際電話や出張訪問で直接相手方のところへ交渉に出向く。
- 注文内容変更や注文キャンセルの理由が、相手方の財務状況の悪化を原因とする場合、時間をかけて契約履行を迫ったり、船積を強行しても結局は代金回収の問題を引き起こすだけに終わることも少なくないため、このような場合は、いつまでもそうした会社に付き合わず、早期にほかのバイヤーを見つけて転売することを目指す方が得策と思われる。
- 商品の性質にもよるが、自社で在庫を抱え込むより、多少値引きしてでも生産した商品を売り切るほうが望ましい場合が多い。
◆法務クレーム
[輸出国や輸入国の法律・規則等を原因とするクレーム]
最近では輸出入ともに、関税法関連のみならず、知的財産権や製造物責任に関連する法律によるトラブルが増えている。
【輸入でのポイントは「輸入許可」がとれるかどうか】1.輸入禁制品
関税法で輸入を禁止されている物品
- (1)麻薬、向精神薬、大麻、あへん、けしがら、覚せい剤及びあへん吸煙具
- (2)けん銃、小銃、機関銃、砲、これらの銃砲弾及びけん銃部品
- (3)爆発物
- (4)火薬類
- (5)化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(以下「化学兵器禁止法」という)第2条第3項に規定する特定物質
- (6)貨幣、紙幣、銀行券又は有価証券の偽造品、変造品、模造品及び偽造カード
- (7)公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
- (8)児童ポルノ
- (9)特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
2.他法令に基づく許可・承認がない場合
(1)薬事法等の国内法規
- 日本国内で、化粧品等の化学製品の販売は、薬事法により国が認めた化学成分のみ認められている。
- 食器や子供用のおもちゃの輸入では、法令により厚生労働省検疫所への食品等輸入届出書の提出が求められている。
- このように、関税法関連とは別の国内法規による規制は、輸入者側であらかじめ調べた上で輸入しないと、輸入港における商品の引取段階で、引取できないとか、追加の検査費用や時間が必要になるなどのトラブルが生じることがある。
(2)知的財産権に関する国内法規と税関での対応
- 特許権・実用新案権・商標権・意匠権・著作権等の知的財産権を侵害する貨物の輸入については、税関が効果的に輸入を差し止める為に、権利者等が税関長に、その権利内容や侵害事実の証拠の提出を行う輸入差止申立制度がある。
- この場合、輸入者側で事前に輸入する商品が知的財産権を侵害していないか確認しておく必要がある。
(3)製造物責任(PL)に関する法規
- 外国商品を輸入販売する際に、その商品の機能について危険を回避する指示や警告の表示をしなければならないこと等を怠り、万が一事故が発生した場合には、日本国内においては輸入者が、その商品の製造物責任を負うことになる。
- 特に輸入者は、外国企業の作成した外国語の取扱説明書の翻訳にあたって、誤訳や不適切な表現がないように注意して日本語版を作成しなければらない。
(誤訳などがあった場合には、外国の商品製造者等に求償できなくなる恐れがあるので要注意)
(4)偽った原産地表示がされている場合
- 誤った原産地表示については、偽った原産地表示や誤認を生じさせる表示があると、輸入が許可されないことを関税法が明確に規定している。
- 原産地表示は、不当景品類及び不当表示方法や、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(通称:JAS法)で詳細を規定しているので、これらの法律に則った表示が求められる。
【輸出では、相手国側の法令を調査すること】輸出の際の法務クレームは、輸入国の法令についての調査が不足していたことによって引き起こされるのが一般的。
また、自社商品の知的財産権については、国際市場で販売する前に、輸出先国での特許申請等も必要になる。
1.知的財産権と模倣品対策
特に、アジア諸国では模倣品がすぐに出現するので、法的に万全な体制を輸出側で整えておかなければならない。
2.海外製造物責任訴訟(PL訴訟)
- 米国は、1965年の「不法行為法リステートメント第402条A」(判例法)によって、製造物責任法(通称:PL法)が成立し、現在では全米50州全てで法律として確立している。
- 米国のPL法の特徴は、被害者の救済に重点を置いているため、訴追者は以下の3点のみを立証できれば、製造業者等の不法行為責任として故意過失の立証が不要。
(1) 損害事実
(2) 商品欠陥や表示上の欠陥等の存在
(3) 損害と欠陥の因果関係 - これは、被害者が訴えを起こしやすいことを示しており、逆に企業側にとっては、過失や故意がなくても損害賠償責任を負う可能性がある厳しい法体系になっている。
- また、米国で提訴されると、日本の民事訴訟のシステムにはないディスカバリ制度(本案前の証拠開示義務制度)によって、裁判所や原告に対する証拠開示が必要になることがあるが、商品製造のノウハウや図面等の開示が要求されることもあり、これも輸出企業にとっては難しい問題をはらんでいる(企業機密の流出)。
- さらに、米国の民事訴訟では、日本では認められない「懲罰的賠償金(Punitive Damages)」も存在している。
- これらの状況を鑑みるに、特に米国で日本商品を販売する際には、海外PL保険の付保はもちろん、専門家のアドバイスによる英文の取扱説明書の作成など、格別な配慮が必要であると思われる。